石版印刷は駒林印刷所の創業時(大正8年)から昭和20年頃まで活躍しました。おもに小物類の印刷に使われ(名刺、葉書、賞状等)、厚紙に対応できることから色紙・段ボールなどの印刷も行っていました。クロムペーパーに油墨で手書きした文字や絵を石版(石灰石・大理石)の上に水張りし転写させると、その部分のみインキが付く“版”になり、印刷が出来るようになります。
活字などの制約もなく、クロムペーパーに描きさえすれば自由に印刷できるので当時の主力機械でした。印刷枚数は1時間で100枚ほどで、版を替えれば多色刷りも可能でした。欠点は石版があまりにも重いうえ、1回1回版を替えるたび“研ぎ”という作業を行わなければならないことでした。
研ぎ=サンドと呼ばれるガラス粉と砂の混ぜた物と水をかけ、石版同士を丹念にすりあわせます、これで前回の印刷面がようやく消えます。しかし、このままでは表面がザラついているので、今度は砥石をまた丹念にかけます。この作業に1時間ほどかかり、冬場などはかけた水が凍ってしまい、事前に炭火などで石版を暖めなければならない作業も追加されました。
「今日は版研ぎだぞ」と言われると、泣きたくなったそうです。印刷自体にも職人の個々の技術がかなり要求されました。
 当時(昭和20年)の印刷職人は毎日残業、休みといえば月一回、盆と正月3日間のみという時代、石版印刷機もそんな高度成長に向かう時代を作った1証人と言えるかもしれません。